女王様のブーツ
映画1000本ノック 4/1000
[ Kinky Boots ]
親の期待に応えられなかった男が2人。
一人は優柔不断、一度は逃げ出しながらも結局親の望む道に戻ってくることになるチャーリー
一人は自分のアイデンティティを親に認めてもらえないまま、それでも突き進み続けるローラ
自分の仕事に誇りを持ち、息子に受け渡すことを描いたチャーリーの父親は、大きな取引先との契約解消を従業員に伝えられないまま靴を作り続け、死んでしまう。
靴をテーマに進むこの物語は、4代続きながらも亡くなった父が隠し続けていた1200足の在庫を見つけるところから始まる。
原価でいいからと引き取り手を探してみるものの「一生履き続けられる」ことに誇りを持ち作り続けた靴は、「10ヶ月でダメになる靴」に負けてしまう。
なぜなら、後者の方が ”儲かるから”。
工場の危機を救うべく、これまで女性の靴を無理に履いていたドラァグクイーン向けのブーツというコアな層をマーケティングとした商品開発に挑む ー 。
「また折れたわ。人生の重みに負けたのね。」
女性物の靴を履きヒールを壊したローラのこの言葉が…!
何足もの靴を履き潰し、それでも新しいヒールを手に取り歩いてきたそれまでを象徴するかのような一言。
たくさんの名言がちりばめられたこの映画、冒頭のこの一言によってぐぅっと内側に入ってきた気がしました。
「素敵な靴が素敵な場所へ連れて行ってくれる」
ヨーロッパに伝わる素敵な言葉。
これを言い換えるのであれば、
「素敵な靴が、素敵な場所を目指す”勇気”を与えてくれる」
ということなのだと思う。
偏見を持たれ、周囲からの風当たりを受けまくりながら生きてきたであろうローラ。
大勢多数でないということだけで、冷たい言葉を掛けても良いと思う人が生まれるこの世界。言葉は文字よりも発せられた音の方が、鋭い。
誰もが自分自身の生き方の正解を探し続ける中で、他人にとやかく言われる事ではないよね。
たまにはぶつかって
ぶつかってもだめで 。
あぁ、やっぱりわかりあえないと感じても
それでもこの人に理解してほしいと思う。
人と人がわかりあうという事は、お互いの気分が良い時だけのものではないし、何かや誰かの仲介を通して成せるものではないんだよね。
個人的には、田舎町の靴工場でキンキーブーツを作るなんて考えもしなかったであろう熟練の職人たちの経験と知恵によって、男性の重みに耐えられる繊細なヒールの靴が完成していく姿が本当に素敵だった。
「彼らには言えない」とこそこそと靴を作りその出来の悪さ(というかローラが欲しがったものを理解していなかった)ことに爆裂キレられるチャーリーだけど、職人たちは「どうやって作るか」に頭を使ったし、よほど柔軟だった。
田舎であること、歴史を持っているからこそ新しいものを理解できないなんて、チャーリーの思い込みでしかなかったんだなぁと。
ひとりじゃ頑張りきれないし、
経験は財産。
そうして出来上がった靴を履き、ローラは言うのだ。
「喝采を浴びにきたのよ」
と。
あぁぁあああ。
かっこよ。
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